ひとつの忘れられない花
牧師 司祭 バルナバ 大野 清夫
英国の現代作曲家にジョン・ラターという方がおられます。ラターは東日本大震災の惨事に心を痛め、福島のために楽曲を作詞作曲されました。”A flower remembered” という曲です。リメンバーは「記憶している」と訳されますが、ここでラターはリメンバーを「神の救いの記憶」として用いています。神様は被災された人々の救いを決して忘れることがない、との意味でリメンバーを用いています。それは聖餐式感謝聖別文の「わたしの記念としてこのように行いなさい」の記念(記憶)と重なります。聖餐式の場で救いの記憶を思い起こし私たちを救われる神の業が、福島の方々にも広がっていくようにとのラターの祈りがここにあります。清里在任中、四季折々に垣間見える神様の意匠に感嘆しつつ、この歌詞を訳しました。
しぼむことのないひとつの忘れられない花がある
その花は日が輝いている時のように輝き咲き誇っている
その香りは消え去らない
ささやかに奏でる音楽のように
穏やかな声が聞こえる
「わたしは決して消えることがない」
そのように語るたくさんのこだまをわたしは聞く
時にそれらはかすかに、そしてある時は鮮明に
あらゆる命の響きを通して、ささやいている
「忘れずにいてくれますか」
鳥たちはわたしの谷を越えて家路につく
雪をいただいた真っ白な山々に向かって
鳥たちは今、去っていった
そして山々の雪は融けた
しかしわたしは今でもその美しさを見る
はるか昔のこの景色を
鳥たちはほかの谷で空を飛び
雪は流れる川となった
すべてのことは過ぎ去った しかし記憶が消え去ることはない
わたしたちは忘れない